小さな世界遺産16選
TN
2018年05月15日

1000を超える世界遺産ではあるものの、一件一件の規模や内容は様々。どんなに有名な建造物でも地球規模で考えるとその登録範囲は点にもならないような遺産が数多く存在している。その中でも小さながら独特かつ考えさせられる世界遺産をご紹介。
  • ブリュッセルのグラン・プラス

    世界遺産をよく知っていなくても旅行好きなら誰もが知っている、ベルギーにある世界一美しい広場のひとつ。大きさは1.48ha。そこまで小さいわけではないが、これを基準に考えるとこれ以後の小ささがよく分かってくる。
  • アーヘン大聖堂

    神聖ローマ皇帝の戴冠の場で知られるアーヘン大聖堂。しかしその登録範囲はたったの0.2haである。理由はラテン十字型ではなく集中式の構造であるため、そこまで建設当時に広大なスペースが確保できなかったから。ただし高さはしっかりあるため数字に比べるとずっと大きく感じるだろう。ちなみにヨーロッパのその他の大聖堂も軒並み0.5~1haほどの大きさで、ゴシック様式により大空間を確保できるようになったシャルトル(1.06ha)やアミアン(1.54 ha)が抜きん出ている。
  • フェラポントフ修道院群

    大聖堂より大きな敷地を持つイメージがある修道院。ただし東方正教の始まったころはまだまだ清貧を旨とする質素なものであった。ここフェラポントフ修道院群はたったの2.1haしかない。それでもロシア正教会の修道院としての歴史と保存状態は随一だ。
  • ポン・デュ・ガール(ローマの水道橋)

    ローマ遺跡として名高いポン・デュ・ガール。その類まれな構造とは裏腹に細い水道橋である事もあって資産の範囲は0.3257ha。ただしこの遺産に限ってはその小ささが驚異的な技術と美的センスを際立たせる結果となっている。
  • ロロペニの遺跡

    高度な精錬技術といえばヨーロッパか中東由来しか存在しないとされた蒙昧な時代を越え、アフリカにも高度な文化が古くから存在していたことを示す、ブルキナファソのロロペニ遺跡。ここで西アフリカの金の抽出と精錬が行われ、アフリカの帝国の繁栄を支えた。ほんの1.113haの遺跡ながら、その歴史的意義は計り知れないものである。
  • ビスカヤ橋

    いくつかある橋の世界遺産の中でも特徴的なのが、スペイン・バスク地方のビスカヤ橋。世界初の運搬橋としてその雄姿が知られている。面積は0.8595haだが高い鉄塔もあいまってさらに印象深い景観を作り出している。
  • バレンシアのラ・ロンハ・デ・ラ・セダ

    同じくスペイン・バレンシアのラ・ロンハ・デ・ラ・セダはその名があらわすように単なる絹の取引所である。しかしこの0.2haの建物が、ゴシック様式がフランスからスペイン(当時はアラゴン王国)に伝わったことと、地中海貿易が巨万の富を生んでいたことを体現しているのである。
  • パドヴァの植物園(オルト・ボタニコ)

    イタリア北部、パドヴァの植物園はパドヴァ大学に付属する2.2haほどの世界最古の植物園。世界中の動植物を知ることができる現代と異なり、目の当たりにしたことのない植物を実際に生きた状態で見ることは、当時の人文主義者の自然観に多大な影響を与えた。
  • ヤヴォルとシフィドニツァの平和教会群

    ヨーロッパに数ある大聖堂・教会建築の中でも随一の歴史的背景を誇る二つの平和教会。三十年戦争による惨禍を記憶する二つあわせてたった0.23haの教会は、カトリックとプロテスタントの初めての歩み寄りを今に伝える木造教会である。
  • ブリッゲン

    ハンブルクのシュパイヤーシュタット登録までは、ほぼ唯一の倉庫群に関する世界遺産。1.196haに広がる木造の建造物は、北欧の木の文化を象徴するとともにハンザ同盟の広がりをも体現する歴史ある町並みを作り出している。
  • ヴァロンゴ埠頭の考古遺跡

    写真一枚でその全容を余すところなく確認できる遺産は、ここをおいて存在しないであろう。埠頭といっても広場のど真ん中にあり、フェンスで囲われているリオデジャネイロのヴァロンゴ埠頭は一見ちょっとした段差か何かにしか見えない。しかしこの埠頭に足跡を刻んだアフリカと南米の歴史、すなわち奴隷の歴史がたった0.3865haの中に満ち満ちているのである。
  • オロモウツの聖三位一体柱

    まず柱という点で非常に小さいものという印象を持ち、実際見てみるとその壮大さに印象を逆転させられる変り種の世界遺産。0.05haのこの遺産には三十年戦争で荒れに荒れたドイツとボヘミアの復興を象徴するという意義深い歴史が刻まれている。
  • カザンラクのトラキア人の墳墓

    世界遺産登録が始まって10年以内に今の登録リストを達成させた国はいくつかあろうが、そのひとつがブルガリアである。そのなかでも少しばかり疑問を生じ得ない物のひとつがブルガリア中南部のカザンラクのトラキア人の墳墓。世界各地に地下墓地の遺産はあるが、おそらくここは最小の0.0155haしかない。もちろんブルガリアの壁画装飾の最高傑作という一面もあるが、同様のシュベシュタリのトラキア人の墳墓が647.6haもあることを考えるとどうもアンバランスである。
  • リートフェルト設計のシュレーテル邸

    1000を越える世界遺産の中で最小ともいえるのがオランダ、ユトレヒトのシュレーテル邸。なんとたったの0.0075haである。しかし直線・直角を多用する装飾、日本の襖からもインスピレーションを得た自由な間仕切りなど、その内装は百年近く前の1924年建造のものとは思えない独創的なもので、デザインという面で現代に及ぼした影響は計り知れない。
  • スレバルナ自然保護区

    時に数十、数百万haクラスが存在し、最大のキリバスにあるフェニックス諸島保護地域に至っては4082万haという想像もつかない大きさを持つ自然遺産。特に基準ⅸ、ⅹに該当するものは広大だ。生物の生息域保護にはそれなりの広さが必要であるが、ブルガリアのスレバルナ保護区はたったの638haである。それでいいのかブルガリア。ちなみに琵琶湖のサイズは670haである。すぐ下流のルーマニアに31万haを誇り動植物数も圧倒的なドナウ・デルタもあるため、登録した者勝ちな感がしてしまう。
  • ステウンス・クリント

    自然遺産としては破格の小ささをを誇るデンマークのステウンス・クリント。ここは50haしかない断崖である。しかしこの断崖は恐竜を絶滅させたといわれるチクシュルブ隕石を物語る稀有な場所なのだ。隕石によって発生した灰が降り積もって形成された地層が、ここで地表に現れているのである。メキシコのユカタン半島に衝突した隕石によって焼き尽くされた動植物が、デンマークに降り注ぐ...。地球規模の破滅の痕跡が、ここには残されているのである。